技術だけでは生き残れない飲食の未来を変える3事業戦略
ミシュランを目指す料理人から3つの事業へ
榎本氏: 事業内容を教えてください。
小川氏: 大きく3つあります。1つ目はレストラン経営。19年前に東京で「エルブランシュ」、10年前に地元・福井の古民家フレンチ「ラル」を開業しました。2つ目はフードビジネス専門のコンサルティング事業。立ち上げから育成まで伴走型でサポートします。3つ目は35歳以下対象のオンラインコミュニティで、若手飲食関係者に技術と考える力をつけて欲しいと考えています。
榎本氏: 開業した経緯は?
小川氏: 若い頃はミシュランの世界に憧れ、技術を磨きました。でも技術だけでは満足できず、社会貢献もしたいと思いました。シェフとして新しいスタイルを確立したくて、オーナーシェフとして開業しました。もともと厨房だけでなく、外に出たいという気持ちがあったんです。
経営の現実と向き合い、教育へ

榎本氏: 実際に経営してみてどうでしたか?
小川氏: 料理が美味しければお客さんが来るというのは、甘い考えでしたね。修行時代は技術しか教わらず、フランスでも経営は学べませんでしたから。いざ開業してみると、売上やコストの管理に追われ、料理より経営に時間を取られる毎日で…。料理の技術だけでは経営は成り立たないんです。でも、今の飲食業界は技術を教える場はあっても、経営を学ぶ機会がほとんどない。だから3割も生き残れない厳しい世界なんです。この状況を変えたくて、若いうちから経営も学べる教育事業を始めました。
料理を楽しむことの大切さ
榎本氏: 料理を楽しむ大切さについて教えてください。
小川氏: 修行時代は1日20時間働き、月1日も休めない日々でした。2年目に辞めようと父に電話すると「帰ってこい。その代わり二度と包丁を持つな」と言われて思いとどまりました。シェフからは「仕事が辛いのは料理を楽しんでないからだ」と言われたんです。
榎本氏: それでどう変わりましたか?
小川氏: 考え方を変えることが、続けるための方法だと感じ、毎日の人参の皮むきやじゃがいもの仕込みを楽しもうと思いました。どうやったら美味しくなるか考え始めたら、少しずつ楽しさが分かってきた。料理が好きだから始めたのに、楽しむことを完全に忘れていたんです。
榎本氏: その経験が今の指導に活きているんですね。
小川氏: はい、今もスタッフには「7割の力で全力を出し、3割は余白を持つ」と伝えています。その余裕で想像し、周りを見渡す。するとチームのことも考えられ、クオリティが上がります。楽しささえ感じていれば、厳しい環境でも続けられる。続けていれば成功体験もできます。技術は手段で、お客様にどんな価値を届けたいか追求し続けること、楽しさを忘れないこと。この2つを大切にしてほしいですね。
Pick up:
小川氏が東京と福井の2拠点経営で見えた地方の課題は、価値ある食体験が評価されにくく、深刻な人材不足、価格競争に巻き込まれやすい環境だった。開業当初「ランチ5000円なんて誰も来ない」と言われ厳しいスタートだったが、「福井の人が誇れる店」という信念で、遠方からも足を運びたくなる店づくりに挑戦。課題解決には若手育成に注力し、福井店スタッフは全員20代。遠隔管理で自ら考え成長できる環境を整備した。10年の実績が地方の高級レストラン増加に好影響を与えている。




プロフィール

氏名:小川 智寛(おがわ ともひろ)
役職:オーナーシェフ
法人概要
法人名:フレンチレストラン エルブランシュ
所在地: 東京都港区麻布十番2-8-10 パティオ麻布十番5F
WEBサイト:https://tomohiro-ogawa.jp/

