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医療・福祉

「自分らしく」を支える福祉の現場から ──地域と園芸で育む共生のかたち─ 社会福祉法人リード・エー 葦の会作業所 施設長 池田 輝子

「支援する側・される側」──そんな境界線を感じさせない空間がある。

社会福祉法人リード・エー「葦の会作業所」では、池田輝子施設長のもと、地域と共に歩む支援が静かに息づいている。

日々の作業に込めた、その哲学を聞いた。


「自分らしく」を支える現場から

榎本氏: 葦の会作業所の事業内容について教えてください。

池田氏: はい、私たち社会福祉法人リード・エーでは、主に知的障害のある方を対象に、就労継続支援B型と生活介護のサービスを提供しています。それに加えて、共同生活援助グループホームや短期入所ショートステイも行っています。地域に根差しながら、利用者の皆さんが自分らしく生活できるようサポートしています。

榎本氏: 施設の立ち上げの経緯を教えてください。

池田氏: もともとは地域の子ども会が発祥なんです。障害のある子もない子も一緒に遊ぶ活動が続いていて、特別支援学校を卒業した後の進路が見つからなかった方たちのために、先生方や地域の支援者が一緒になって立ち上げました。親御さん主体ではなく、地域の支援者たちによって始まったのが特徴ですね。もう40年以上続いています。


人との出会いがすべての原点

榎本氏: このお仕事に就かれたきっかけはなんでしょうか?

池田氏: 私はもともと別の地域で入所施設に勤めていたんです。その後、重症心身障害の方の訪問支援などを経て、知人の紹介でこちらに関わるようになりました。原点をたどると、ご近所にいた脳性麻痺の方との出会いが大きいですね。障害という言葉も知らない幼い頃にその方に可愛がっていただいた経験が、自分の進路を自然と福祉に向かわせたのかもしれません。

榎本氏: ボランティア活動などにも携わっていたとお伺いしました。

池田氏: はい、大学時代からずっとです。自立運動が盛んな時期で、「自分の意思で生活したい」という当事者の思いに強く共感しました。だから今でも「ともに働く」「ともに生きる」という姿勢を大切にしています。

榎本氏: なるほど。「支援する」ではなく「ともに働く」という姿勢なのですね。

池田氏: そうです。私たちは支援員ではなく、一緒に働く仲間です。もちろん、配慮や準備、確認はしますが、基本は対等な立場で一緒に作業する。それがここの基本方針なんです。職員が真剣に働く姿を見て、皆さんも「仕事とはこういうもの」と実感してもらえるような環境をつくっています。



町に出て、町とつながる

榎本氏: 外部の仕事にも積極的に取り組まれていると聞きました。

池田氏: はい。草取りや公園の清掃、個人宅の手入れなど、地域に出ていく仕事を多くしています。こうした活動を通じて、町の方々に顔を覚えていただき、声をかけてもらえるような関係を築くことができます。たとえば、公園で掃除していると「ありがとう」と声をかけていただいたり、困っているときに助けていただけたりと、日々の小さな関わりの積み重ねが、地域に根ざした支援の形を生み出しています。


小さな選択が自信になるまで

榎本氏:「自分らしく生きる」ことの大切さを、現場でどう伝えておられますか?

池田氏:多くの方が、生まれてからずっと親や先生が選択した生活を送ってきた経験を持っています。だからこそ「自分で選んでいいんだよ」と伝えるところから始めます。たとえば、お弁当を選ぶだけでも、最初は何十分もかかります。でも5年かけて、ようやく「これがいい」と自分で選べるようになる。そうした積み重ねが、「自分の意思」を形成する支援になります。

榎本氏:その小さな選択の積み重ねが、大きな自立に繋がっていくんですね。

池田氏:そうなんです。そして、働くことだけが目的ではありません。園芸作業やアート、音楽、運動など、好きなことを見つける機会も大切にしています。園芸は特に力を入れていて、植物は世話をした分だけ応えてくれる存在。水やりや草取り、鉢の移動といった単純な作業にも、それぞれの得意が生かせる場面があります。なにより、花が咲いたり、野菜が育ったりする成果を目にすることで、喜びや達成感を得られるんです。


花とともに心も育てる

榎本氏: 園芸には心を整える力もありますよね。

池田氏: はい。季節の移ろいを感じながら土に触れることは、感覚面の刺激にもなりますし、気持ちの安定にもつながります。それに、町の方々とのつながりを持つきっかけにもなるんです。畑仕事に行く途中、地域の方に「今日は何を植えるの?」と声をかけてもらえることもあります。外に出て活動することで、町の方に顔と名前を覚えていただく、それが地域に開かれた作業所であるための大きな要素だと思います。


歳を重ねても、希望の花を

榎本氏: 最後に、法人として今後目指していきたいことは?

池田氏: 皆さん年齢を重ねていますので、これからの老いを見据えた体制づくりが必要だと感じています。地域の中で、最期まで安心して暮らせる仕組みを作っていきたい。それから、もっと報酬を上げられるような仕事づくりにも挑戦していきたいですね。園芸作業を通じて、花の生産や販売の幅を広げていけたらと願っています。特に、園芸に精通する方々や企業の皆様ともっとつながりを持ち、技術的なアドバイスや新しい発想を取り入れながら、活動の質を高めていけたらと思っています。私たちの活動に共感してくださる園芸に詳しい方や企業の皆様と連携しながら、新たな可能性を一緒に育てていけたら嬉しいです。




プロフィール


氏名:池田 輝子(いけだてるこ)
役職:施設長

略歴

幼少期に障害者との交流を通じて福祉に関心を抱いた。大学時代から自立支援運動に参加。入所施設勤務や訪問支援を経て、地域密着の障害福祉に転身。現在は社会福祉法人リード・エー「葦の会作業所」施設長として、園芸活動や地域連携を軸に共生社会の実現を目指す。


施設概要

社名:社会福祉法人リード・エー 葦の会作業所(しゃかいふくしほうじん りーど・えー あしのかい さぎょうしょ)
本社所在地: 東京都足立区東伊興1-14-7
業種分類:医療・福祉
施設長:池田 輝子(いけだてるこ)
WEBサイト:https://www.reed-a.org/

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榎本ゆいな

榎本ゆいな

SNS総フォロワー11万人超!経営者の本音を引き出す、才色兼備の名インタビュアー

榎本 ゆいなさん(えのもと ゆいな)は、2002年6月16日生まれ、福岡県出身のモデル・タレントです。現在、大学に在学しながら、ジャストプロに所属。2022年4月からはTBSテレビ『王様のブランチ』でリポーターとして活躍されています。明るく親しみやすいキャラクターで視聴者の支持を集めています。また、2024年9月4日放送のTBS『水曜日のダウンタウン』では芸人・ひょうろくさんとの共演がSNSで大きな話題となり、SNS上でも大きな注目を浴びました。プライベートでは読書やゲーム、カフェ巡りなど多彩な趣味を持ち、X(旧Twitter)では3.5万人、Instagramでは7.4万人のフォロワーから日々温かいメッセージや反応が寄せられています。(2025年3月現在)今回、榎本さんにインタビュアーをお願いしたいと考えたのは、リポーターとして培われた、相手の言葉を引き出す力、そして、自然な言葉で伝える力に魅力を感じたからです。普段はなかなか社員に直接伝えきれない考えを、榎本さんが引き出し、読者(社員の皆様、そして未来の仲間となるかもしれない方々)に届けてくださることを期待しています。また、榎本さんの持つ親しみやすさは、インタビュー記事をより身近なものにし、経営者のビジョンや想いをより深く、より多くの人々に伝える力となるでしょう。テレビとSNSで培われた榎本さんの発信力は、インタビュー記事を通じて社内の一体感を高めるとともに、企業の魅力を社外に発信し、未来の仲間との出会いを生み出すきっかけにもなると信じています。

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