プレジデントオフィス

医療・福祉

介護と福祉の垣根を越え、 地域と共に描く確かな未来 ― 株式会社みとみ 取締役専務 三富 肇

地域に根ざし、介護と福祉の新たな形に挑む株式会社みとみ。

創業の想いを受け継ぎながら、三富氏が語る『この場所だからこそ実現できる暮らし方』とは何か。

その答えを語っていただきました。


制度の壁を越える施設

榎本氏: 事業について、全体像を教えていただけますか。

三富氏: 私たちは大きく二つの分野に取り組んでいます。一つは高齢者介護、もう一つは障害福祉です。どちらか一方ではなく、両方を運営しているのが特徴です。さらに、横浜市保土ヶ谷区には、高齢者と障害をお持ちの方が同じ屋根の下で生活できる複合型施設を運営しています。全国的にも珍しい取り組みです。

榎本氏: 確かに珍しいですね。なぜ複合にされたのですか?

三富氏: 障害をお持ちの方も65歳を超えると介護保険に切り替わります。その時に、それまで利用していた福祉サービスから突然介護サービスへ移る必要が出て、混乱するケースが少なくないのです。制度の壁で居場所を失う人がいる。そこで私たちは、「入居後ずっと環境を変えずに暮らし続けられる」施設を目指しました。制度の狭間に取り残される人をなくしたい、という思いが根底にあります。


創業の原点 ― 母の想い「自宅開放」

榎本氏: 創業の経緯についても伺えますか?

三富氏: きっかけは母です。母はもともと訪問看護師をしていましたが、制度の枠内ではできることが限られ、「もっと心のこもった介護をしたい」と考えるようになり、自宅を開放し、平成10年頃に小規模な介護事業を始めたのです。

榎本氏: ご自宅からのスタートだったのですね。

三富氏: 当時の母は「看護師としての専門性を活かしながら、人として寄り添える場所をつくりたい」という強い想いを持っていました。制度やマニュアルだけでは実現できない『あたたかさ』を求めていたんだと思います。その姿勢は今も会社の理念として根付いています。



祖母の介護と運送業からの転身

榎本氏: 三富さんご自身は、どのようにしてこの事業に関わられるようになったのですか?

三富氏: 私はもともと運送業をしていました。ただ、将来性を考えたときに「介護は社会に絶対必要な分野だ」と感じたこと。そして、もう一つ大きなきっかけが祖母の介護です。祖母の認知症が進んで寝たきりに近い状態になり、私たちの家に呼び寄せ、介護に私も関わることになったんです。

榎本氏: ご家族の介護経験があったのですね。

三富氏: 親子だと距離が近すぎて衝突も起きやすいですが、孫という立場だったことで適度な距離感があり、介護に自然と入っていけたのだと思います。その経験で「介護とは何か」「人を支えるとはどういうことか」を実感しました。それが母を手伝う決心につながりました。



当たり前の生活を、当たり前に

榎本氏: 御社の理念について教えていただけますか。

三富氏: 一番大切にしているのは「当たり前の生活を、当たり前に送っていただくこと」です。入居者10人いれば十人十色の生活があります。それぞれのその人らしい時間を大切にしたい。これは創業当時から変わらない理念です。

榎本氏: その理念を実現するための工夫は?

三富氏: 例えば、施設の規模をあえて小さくしていることです。9名定員の有料老人ホームは、家庭的な雰囲気の中で生活していただけます。キッチンで炊事の音や匂いを感じながら暮らすことで、病院では難しい生活改善につながる方も少なくありません。



利用者との関係性とやりがい

榎本氏: やりがいを感じるのはどんなときですか?

三富氏: 利用者さんから「三富さんだから話せる」と言っていただいたり、普段は無口な方が笑顔を返してくれたりする瞬間ですね。信頼関係を築けたことを実感できる瞬間は、何ものにも代えがたいです。

榎本氏: 信頼を築くために心がけていることは?

三富氏: 基本的なことですが、傾聴です。ただ聞くだけでなく、その人が本当に求めていることを会話から読み取り、寄り添うことを意識しています。以前カウンセリングを学んだ経験も活きていると感じます。



地域とのつながりと未来への展望

榎本氏: 地域との関わりも大切にされていますね。

三富氏: 自治会に参加したり、祭りを開催したり、小中高校と交流したりしています。地域に溶け込み、施設を「特別な場所」ではなく「身近な存在」として認知していただくことが大切だと思っています。

榎本氏: 今後の展望について教えてください。

三富氏: 今後は「生活介護」に力を入れたいです。入居者が外に出て、映画を観たり、買い物をしたりする体験から新しい目標を見つけていただく。それを作業所や就労支援につなげ、最終的には地域で働ける場をつくりたいと考えています。

榎本氏: 最後に、働く仲間について伺えますか?

三富氏: 福祉業界全体が人手不足ですが、私たちは「職員第一」を掲げています。給与改善で経営は厳しい部分もありますが、まずは職員に幸せになってもらうことが先だと考えています。いずれその想いが入居者や家族、そして会社に返ってくると信じています。だからこそ、同じ志を持って一緒に働いてくれる方を求めています。



Pick up:
高齢者と精神疾患を支える、新しい介護のかたち

三富氏が率いる施設は、高齢者介護と精神疾患を抱える人々の暮らしを同じ屋根の下で支える全国的にも稀有な存在である。障害福祉と介護保険という二つの制度の狭間に取り残されがちな人々を受け入れ、住み慣れた場所で「当たり前の生活」を続けられる環境を整えている点が大きな特色である。
始まりは、母が自宅を開放した小さな介護から。そこに運送業から転身した三富氏が加わり、医療ニーズの高い入居者や精神疾患のある方々を受け止める場へと発展してきた。地域との交流や若者への支援にも積極的で、利用者の人生を支えるだけでなく、地域社会に開かれた施設を目指す姿勢が強くうかがえる。
こうした複合的な取り組みはまだ広く知られていないが、その存在意義は大きい。


プロフィール


氏名:三富 肇(みとみはじめ)
役職:取締役専務

略歴

運送業から転身し、母が自宅で始めた介護事業を継承。高齢者介護と障害福祉を融合した複合施設を運営し、「当たり前の生活」を支える理念のもと地域に根差した介護を実践している。


会社概要

社名:株式会社みとみ
所在地: 神奈川県横浜市保土ケ谷区権太坂2-3-20
業種分類:医療・福祉
WEBサイト:http://www.mitomigroup.com/

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榎本ゆいな

榎本ゆいな

SNS総フォロワー11万人超!経営者の本音を引き出す、才色兼備の名インタビュアー

榎本 ゆいなさん(えのもと ゆいな)は、2002年6月16日生まれ、福岡県出身のモデル・タレントです。現在、大学に在学しながら、ジャストプロに所属。2022年4月からはTBSテレビ『王様のブランチ』でリポーターとして活躍されています。明るく親しみやすいキャラクターで視聴者の支持を集めています。また、2024年9月4日放送のTBS『水曜日のダウンタウン』では芸人・ひょうろくさんとの共演がSNSで大きな話題となり、SNS上でも大きな注目を浴びました。プライベートでは読書やゲーム、カフェ巡りなど多彩な趣味を持ち、X(旧Twitter)では3.5万人、Instagramでは7.4万人のフォロワーから日々温かいメッセージや反応が寄せられています。(2025年9月現在)今回、榎本さんにインタビュアーをお願いしたいと考えたのは、リポーターとして培われた、相手の言葉を引き出す力、そして、自然な言葉で伝える力に魅力を感じたからです。普段はなかなか社員に直接伝えきれない考えを、榎本さんが引き出し、読者(社員の皆様、そして未来の仲間となるかもしれない方々)に届けてくださることを期待しています。また、榎本さんの持つ親しみやすさは、インタビュー記事をより身近なものにし、経営者のビジョンや想いをより深く、より多くの人々に伝える力となるでしょう。テレビとSNSで培われた榎本さんの発信力は、インタビュー記事を通じて社内の一体感を高めるとともに、企業の魅力を社外に発信し、未来の仲間との出会いを生み出すきっかけにもなると信じています。

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